不動産取引のトラブルの実例
弁護士 宮崎 祐二

 

私が弁護士として実際に取り扱った不動産取引に関する3件のトラブル事例を、多少修正してQ&A方式にまとめてみました。ご参考にしてください。

 

Q1 (雨漏りと責任免除特約)
 Aの自宅は戦後まもなくして建てたもので、老朽化が進んでいて雨漏りしたこともありました。そのうえ阪神大震災にもあって、クラックが入り、その部分は修理したものの、老夫婦二人だけですので使い勝手が悪く、これを売却してマンションに移ろうと考えました。
そこで仲介業者のBへ売却を依頼したところ、BがCを見つけてきたので、Bの仲介でAはCと売買契約を締結しました。
 売買契約書には、老朽化と被災による責任は負わないとの条項が入っていましたが、決済後にCからAに対して、雨漏りがするのでその修理費用や慰謝料合わせて100万円の損害賠償をせよという訴訟が提起されました。Aにはそのような支払義務があるのでしょうか。
Q2 (売買契約におけるマンションの修理費の負担の帰属)
 AはBからあるマンションを仲介業者のCを通して2000万円で買いました。取引の決済が終了してAが転居した後にマンションの管理組合の集会が開かれ、そこでマンションの修繕の決議が可決され、1戸あたり400万円の負担金を支払うことになりました。 ところで売買契約書では、マンションの修繕の決謙が決済日までになされた場合には売主(つまりB)の、それ以降は買主(つまりA)の負担になると明示されていました。これを形式的にあてはめると、決済以降に修繕の決議があったのですから、Aがこの400万円を負担することになると考えられます。しかし、売主であるBは実は管理組合の副理事長をしていて、修繕の決議が可決される見込みであることを十分知っていたことが判りました。それなのにBは売買の時点で既に管理組合が修繕についての見積りをとっていることや、何らかの修理が必要であることは知っていたにもかかわらず、それらのことを−切隠して売り逃げを図ろうとしたようです。Aは売主であるBや、仲介業者Cに損害購償請求をすることが出来ないでしょうか。
Q3

(仲介業者の重要事項説明義務違反)
 Aは仲介業者のBを通じて、公道から奥まった一戸建の家をCから買いました。売買にあたってのBの作成した重要事項説明書には、家から公道には幅2mの専用の通路が通じていて、将来建替えることも可能であると書かれていました。
それから10年経過して、Aが建物を建替えようと思って知り合いの建築士に依頼したところ、この私道の内、1m50cmはAのものですが、残り50cmは左隣りの家のDの所有であり、Dの承諾がないと公道へ通じる2m幅の道路が確保できないため、建築確認がおりないと言われました。Dは近隣でも評判が悪い人物で、とても承諾してもらえそうもありません。Aはどうすればよいでしょう。

 

まとめ

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