不動産取引のトラブルの実例
弁護士 田中 祐二

 

Q2

(売買契約におけるマンションの修理費の負担の帰属)
 AはBからあるマンションを仲介業者のCを通して2000万円で買いました。取引の決済が終了してAが転居した後にマンションの管理組合の集会が開かれ、そこでマンションの修繕の決議が可決され、1戸あたり400万円の負担金を支払うことになりました。 ところで売買契約書では、マンションの修繕の決謙が決済日までになされた場合には売主(つまりB)の、それ以降は買主(つまりA)の負担になると明示されていました。これを形式的にあてはめると、決済以降に修繕の決議があったのですから、Aがこの400万円を負担することになると考えられます。しかし、売主であるBは実は管理組合の副理事長をしていて、修繕の決議が可決される見込みであることを十分知っていたことが判りました。それなのにBは売買の時点で既に管理組合が修繕についての見積りをとっていることや、何らかの修理が必要であることは知っていたにもかかわらず、それらのことを−切隠して売り逃げを図ろうとしたようです。Aは売主であるBや、仲介業者Cに損害購償請求をすることが出来ないでしょうか。

 

A2 まず、仲介業者Cについては、Bと同様に修繕についての事情を知っていながら、いわばBと共謀してその事実を言わずにAに買わせたというような場合には、当然責任を負うことになるでしょうが、事情を知らないときには責任を負わないことが多いでしょう。次にBに対しては先ほどの売買契約書の中に記載された費用負担につ
いての条項を見る限りでは、その責任を追及することは困難のように見えますが、契約書の解釈は必ずしも形式的にばかりなされるものではありません。
あまりにそのやり方が悪どいものと裁判所で判断されるときは、一定限度において責任が問われる場合があります。現に私が関与した同種の事件では、真実を隠して売ろうとしたBに100万円の損害賠償の支払が命じられました。

 

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