不動産取引のトラブルの実例
弁護士 田中 祐二

 

Q3

(仲介業者の重要事項説明義務違反)
 Aは仲介業者のBを通じて、公道から奥まった一戸建の家をCから買いました。売買にあたってのBの作成した重要事項説明書には、家から公道には幅2mの専用の通路が通じていて、将来建替えることも可能であると書かれていました。
それから10年経過して、Aが建物を建替えようと思って知り合いの建築士に依頼したところ、この私道の内、1m50cmはAのものですが、残り50cmは左隣りの家のDの所有であり、Dの承諾がないと公道へ通じる2m幅の道路が確保できないため、建築確認がおりないと言われました。Dは近隣でも評判が悪い人物で、とても承諾してもらえそうもありません。Aはどうすればよいでしょう。

 

A3 建築基準法43条で、建物の敷地は    道路に2m以上接していなければならないと定められており、これを「接道義務」と呼んでいます。Aの家は、道路と接しているAの所有地の幅が1m50cmにすぎないので、この接道義務を満たしていないことになります。
 このような物件を仲介業者が売却しようとする場合には、宅地建物取引業法35条の重要事項説明義務に基づき、通路の権利関係(2mの通路の内、50cmはDの所有であるから、Dの承諾がないと建替できないこと)をきちんと説明する必要があるのに、Bはそれを怠ったものと言えます。
 私の取り扱った同種の事件での仲介業者Bは、世間に名の知られた大手不動産会社でした。そのような会社でも私道の権利関係という基本的な点を見過ごして説明しませんでした。そこで私はBを相手に、この一戸建の買取りを要求する調停の申立をしましたが、結局BはDと反対側のEから幅50cmの土地を分けてもらいAに渡すということで、こちらの建替が可能となり、問題を解決することが出来ました。

 

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