不動産取引のトラブルの実例
弁護士 田中 祐二

 

Q1

(雨漏りと責任免除特約)
 Aの自宅は戦後まもなくして建てたもので、老朽化が進んでいて雨漏りしたこともありました。そのうえ阪神大震災にもあって、クラックが入り、その部分は修理したものの、老夫婦二人だけですので使い勝手が悪く、これを売却してマンションに移ろうと考えました。
そこで仲介業者のBへ売却を依頼したところ、BがCを見つけてきたので、Bの仲介でAはCと売買契約を締結しました。
 売買契約書には、老朽化と被災による責任は負わないとの条項が入っていましたが、決済後にCからAに対して、雨漏りがするのでその修理費用や慰謝料合わせて100万円の損害賠償をせよという訴訟が提起されました。Aにはそのような支払義務があるのでしょうか。

 

A1 なかなか難しい問題です。ポイントは2つあります。1つは、その契約が土地値だけの売買なのか、建物の価格も含まれていたかです。土地値だけの売買であることが明らかであれば、そもそも建物に価値を認めていないわけですから、CがAに対し、そのキズをとやかく言うことはできません。もう1つは、「責任は負わない」という趣旨がクラックなど目に見えるキズは負わないということなのか、雨漏りなど目に見えないキズの責任(これを蝦庇担保責任といいます)も負わないということなのか、ということです。その点がはっきりしなければ、いくら古くなったとはいえ少なくともそこに居住しようと思う人は、家に雨漏りがするとは予想していないはずですから、買主から売主に対する蝦庇担保責任に基づく損害賠償請求はある程度認められると思います。
 
ちなみに、私の事件では、雨漏り自体が明らかでないこともあって、結局裁判所で売主が買主に25万円を支払うことで和解が成立しました。

 

メニューへ 次へ