定期借地権に関するQ&A
弁護士 宮崎 祐二

 

Q20

借地人による中途解約が認められますか。

 

A20

 借地人の中途解約を認めるかどうかについては、賛否両論があります。
これを認めない立場の理由としては、
@諸外国では中途解約の慣行がないこと。
A借地借家法が本来予定した長期的な一般定期借地権の趣旨に反すること。
B借地人の一方的な意思により借地関係を消滅させることは、借地上建物の担保権者や借家人などの利益を害することになりかねないこと。
C1つのまとまった敷地の一部が借地関係を終了すると、ふぞろいな現況となること、などがあげられています。
 しかし、私としては、@今回の定期借地権制度そのものが、まだ出来たばかりで、しかも日本独自のものであって、諸外国の慣行をまねる必要があるか疑わしいこと。
A借地借家法の本来の趣旨も、一定の合理的理由がある場合には、その変更を認めてもよいこと。
利害関係人がいる場合には、合意解約に関する最高裁判決があるとおり、そもそも中途解約権を認める余地がないこと。
Cまわりの環境に合わなくなるかどうかは中途解約後の地主の配慮如何によること、などから、借地人の中途解約を一切認めない考え方は疑問です。
 むしろ、一定の事由が発生した場合、たとえば建物が天災などで滅失又は著しく棄損したときとか、30年以上経過した建物が著しく老朽化した場合には、中途解約を認めてよいと思います。
このような場合にまで借地関係を継続させて、借地人に地代の支払義務を負わせるのは大変酷だと思うからです。
かと言って、地主の地代を継続して受領できる期待権を突然奪うのも問題ですので、1年程度の告知期間や相当額のペナルティーの支払いを借地人に課すことも許されるべきです。
もっとも、将来借地権の取引市場が整備されるようになれば、借地権が不安となった借地人は、その借地権を第三者へ売却することで一定限度の代金を得ることも出来るでしょうから、中途解約の問題も自然に消滅することになるかも知れません。