阪神淡路大震災では、阪神間で約170棟の分譲マンションが被災し、その内、約100棟が「建替え・再建」へ、又、約50棟が「復旧」へと進みました。
しかし、残る約20棟は、大きな被害を受けたにもかかわらず、建物自体は倒壊を免れた結果「建替え」か「復旧」かの方針すら決まらず、「立ち往生」のまま2年が経過しています。
建替えにしても復旧にしても、その事業の中には多数の困難なハードルがあることは事実ですが、自分のマンションの行方すら決まらずに長期にわたる仮設住宅住まいを余儀なくされている方や、住宅ローンを抱えながらも賃貸住宅で生活されている方などにとって、この「立ち往生」の事態は非常に重大な問題であります。
では、なぜ、どのような理由で「立ち往生」の状態が続いているのでしょうか。
マンションを新たに建替えするには、専有面積にもよりますが、通常、約1000万円から約2000万円の新たな資金負担が必要です。
この資金負担は、現在住宅ローンを抱えているサラリーマンや、年金で生活されている高齢者にとっては、大きな負担になります。
そこで復旧することにより、少しでも資金負担を軽くしたい、又、根本的に「補修して住めるものであれば解体する必要はない」との考え方があります。
一方、多くの資金を負担して復旧しても「本当に安心して生活ができるのか」といった疑問や、「資産価値が大幅に減少するのではないか」との不安があり、内部的な意思の統一が図れない状態が続いているというのが一番の問題です。
マンションを新たに建替えようとするときに、当該マンションが、いわゆる「既存不適格」なマンションとなっている為、建築基準法上の容積率の点から、従前の住戸数が確保出来ない場合があります。
総合設計制度等の規制媛和策を取り入れても、元のマンションに戻れない区分所有者が出てくる場合、やはり、復旧か建替えか、その意思統一が困難になっています。
建替えに対して内部的な意思統一が図れたとしても、建替えをするためには、原則として、現在設定されている全ての抵当権を、一旦、抹消する必要があります。
しかし、ローンの金額が土地共有持分の価格を大幅に上回っているために、その抵当権の抹消が出来ない区分所有者があると、建替事業全体の遂行の妨げになるばかりでなく、場合によっては、他の区分所有者の費用負担によって、当該ローンの肩代わりをする必要まで生じることがあります。
これらの問題以外にも、マンションの被害判定の困難さ、復興工事費の見積のバラツキとその正当性の判断の難しさ、又、同一敷地内に数棟のマンションが有る場合における建替棟と復旧棟の問の不公平感の問題や、管理組合や住民の間の意見(感情も含めて)の対立やトラブル等の問題を抱えることによって、「立ち往生」の状態が続いているのが実情です。
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