定期借家の法律Q&A
弁護士 宮崎 祐二

 

Q18

定期借家の導入による、家主のメリットとデメリットは何ですか。

 

A18

家主にとっての最大のメリットは、期限が来れば必ず明渡しが認められることで、しかも、立退き料が不要ということです。その結果、現在はあまり考えにくいかもしれませんが、将来土地の価格が上がったときのいわゆるキャピタルゲインは、すべて家主に帰属することになります。更に中途解約と家賃の減額請求の両方を排除することで、契約期間の収入が確定します。これによって、不動産の証券化も進み、家主がキャッシュフローを得ることが容易になります。なお、契約期間の終了時に、良質な借家人とのみ再契約することで、借家全体の質を向上させるという効果も見逃すことはできません。
 他方、家主にとってのデメリットは、これまでの普通借家の正当事由制度から慎重であった人々が、定期借家制度の導入で安心して借家の供給に乗り出すことが予想され、供給過多から家賃や一時金の低下が起こるでしょう。又、借家人も契約期間の終了時には、明渡しをする覚悟をすることになるので、たとえ家主が再契約を望むような借家人であっても、立ち退いてしまって、空室が増大することも考えられます。家主はこれまで以上に厳しい借家経営を余儀なくされることになるでしょう。