私たちの属する国や地方公共団体が、税金を主な原資として様々な公的サービスを行っていることは言うまでもありません。学校も消防署も、無形の社会的基盤である法律も、私たちの生活に欠かすことはできません。私たちはそれにかかる費用を税金として拠出しています。
税金をどのように使うのかという使途側の問題を別にして、どのような場面でいくらぐらいの税金を取られるのかという徴収側の問題を考えてみます。
この入口と出口の問題は、それぞれ独立して考えてはいけない面もあります。我々日本人は、徴税されるばかりの意識が強く、どのように使うのかについては無関心である傾向があります。また消費税を福祉目的税に、というように人口と出口をつなげて議論する場合もあります。この入口と出口は大規模で複雑で歴史を持った国家制度として運営されており、簡単に理解することができません。以下ではこれを理解する一助として、徴税場面と規模を大まかに整理して考えてみます。
税金はどのような場面で徴収すればいいのでしょうか。徴収されるだけの立場でなく、例えばあなたが大きな団体の会長であるとすると、どのような時に会費を取れば、多くの会員が納得し、会が活性化され、100年間も健全に存続できる会となることができるでしょうか。 |
私たちの経済生活は、所得を得て、消費し、残りを蓄財し、循環しています。ここから3つの揚面が考えられます。
A 利益をあげた会員から、利益の一部を徴収する。
B 財産を持っている会員から財産に応じて会費を徴収する。
C 何かを購入した会員から、消費額に応じて会費を徴収する。
それぞれの特徴を上げてみましょう。
利益から徴収するのは、100万円儲けたら10万円よこせという論理であり、全員が納得しやすく、しかも会費を支払う資力がある(担税力がある)。しかし不景気になれば収入が減るし(景気動向に左右される)、またいかに会を魅力的にしても、隣の会
の税率が大幅に低いなら会を移る人がでる(所得の海外移転)。
また経済社会が複雑になれば、利益すなわち所得という概念も複雑になり、法人税や所得税の法令、通達を時代に合わせて追加変更し、会員に知らしめ教育するのに多大のコストが必要です。
B 財産を持っている会員から財産に応じて会費を徴収する。 |
財産を持っているという状態に対して課税されるものは、固定資産税や現在停止中の地価税です。相続税も親族で財産を維持するための税金と考えれば、同じく財産保持の状態に対する税金です。日本人の財産は不動産の割合が高く、このため比較的安定した税収が見込めます。ただ財産を持っていることに対して課税するため、私有財産制を否定する雰囲気があるとともに、平等社会を実現する面もあり、増税にしても減税にしても大論議となります。
固定資産税は持ち家が全員にほぼ行き渡ったことから、人頭税のような大衆課税になっており、租税収入もかなりあります。相続税は関心が高い割りには税収としては少ない。所得税と法人税の改正が一通り終わったため、次はこの相続税、特に最高税率と非上場株式の評価の問題についての論議が盛んです。
C 何かを購入した会員から、消費額に応じて会費を徴収する。 |
何かを買ったりサービスを受けた時に支払う消費税は、以前よりタバコ税や酒税がありました。一部の例外を除いて、原則すべての消費に課税するのが消費税です。タバコや酒はやめることができますが消費全体をやめることはできませんので、安定した会費収入が期待できます。また仕組みが簡単なため徴税コストがそれほどかからない。
実際の納税を行う事業者は、もらった消費税から支払った消費税を控除して納税する。免税業者や簡易課税等、過渡的な制度は残っていますが考え方は単純明瞭です。
しかしこのような税金は逆進的であると言われております。所得の低いものにも、所得の高いものと同じように負担をさせており、貧富の差がつきやすいという意見です。
努力すれば富者になれる機会を十分に与えればいい、という考え方や、ある程度の結果平等を維持するべきである、という考え方もあります。
あなたはどのように考えますか。
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