不動産の証券化と評価
不動産鑑定士 濱本 満

 

 最近、不動産の証券化が話題になっています。
 不動産の証券化とは、不動産に精通したプロと金融プロとが両者のコンビネーションにより不動産を金融商品に仕立てあげることです。この金融商品を買うのは、個人投資家であり、機関投資家ですが、いまのところ、商品として未熟で、取引市場も整備されておらず、試行錯誤の段階です。
 不動産のみならず貸付債権やローン債権、信託の受益権等キャシュフローを生み出すものならなんでも証券化の対象とされていますが、不動産は、地域性、用途別需給関係、維持・修繕、処分価格等が予測しづらく、長期キャシュフローの計量が難しいことから、最も証券化しにくいものとされてきました。
しかしこ不動産については、投資対象がはっきりしており、予測部分を含めてその内容が明らかにされる限り、比較的投資分析しやすく、キャピタルゲイン・ロスやインカムゲイン・ロス等多様な変動要素があるために、市場が整備されれば、おもしろい金融商品になるもめと考えられます。
当面、不動産の証券化は、全館賃貸に供されているオフィスビル、商業ビル、アパート、マンション等収益物件に限定されるものと考えられます。
 なぜなら、その場所・用途に即して収支計算ができ、比較的キャシュフローが計量しやすいからです。他方自用のビルや、住宅は貸付債権やローン債権の元利償還金等のキャシュフローがありますが、これらは、むしろ貸付債権の証券化の分野です。また、更地等の未利用地は貸地にでも供されない限り、キャシュフローを生みだしませんので、証券化には不向きです。
このたび、定期借家の制度が出来ましたので、この制度を活用すれば、より確定的な将来予測が可能になるものと考えられます。
次に証券化が可能な不動産の評価について考えてみます。
この場合、不動産の投資価値ということで、投資分析にもつながります。
基本的に、不動産の評価方法には、取引事例比較法、収益還元法、原価法があり、三つの手法により導かれた価格を関連調整し、土地価格に関する部分は、都市計画地域では地価公示価格、地価調査価格を規準として求められることになっております。
もっとも、不動産の投資価値は、キャッシュフローにより求める必要があることから、収益還元法が中心となります。取引事例比較法や原価法による価格は処分価格の参考にすぎません。
収益還元法には、比率法(永久還元法)、インウッド法(有期資本還元法)等がありますが、いずれもキャッシュフローが表に出ません。キャッシュフローが把握できない限り、投資分析ができず、投資価値も把握できません。そこで、DCF法(DiscountedCashFlowMethod)を利用します。
 DCF法は各年度の収支計算による純収益と処分価格を現在価格に割り戻した総和により、投資価格を求める方法です。
これを簡単に例示すると、今、市場において、年間平均純収益800万円が見込まれる収益物件が、1億円で売りに出されており、5年後9000万円程度で売却可能とします。なお、割引率により複利計算します。そして、収益率は6%最低確保したいとした場合、少なくとも5年間の投資計画は、この物件を言い値で買っても、投資額を回収し、期待通りの収益は確保できるということができます。

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