一般的には、土地建物を購入する資金調達力のないものが定期借地権を利用して建物を取得すると考えられております。
確かに土地建物ともに購入するのに比べ、定期借地権の場合は、はじめの必要資金が建物代金と保証金であり、土地代金が不必要であるため安価であります。
しかし、本当は土地建物を購入したいのであるが、資金不足のためにあえて不利である定期借地権を選択した、といった考え方が正しいのかどうか検証してみたいと思います。
濱本不動産鑑定士による定期借地権地代決定理論を解説しながら、有利不利の均衡点を探ってみます。
またこのような決定理論はモデルケースの提供でもあり、次のような効用も期待できます。
定期借地権の契約内容のうち、保証金の大小や地代の設定方式が多様になります。たとえば保証金を少なくする場合は地代を高くする等です。
さらに定期借地権によって何区画も分譲する場合、それぞれの区画の地代等の条件の差を合理的に設定し、かつ需要者に説明できます。
はじめに需要者はどのように考えればいいのか検討してみます。
Aケース 定期借地権により建物を購入する。
Bケース 土地建物ともに購入する。
|
AケースとBケース共に建物代金は同一条件です。
また土地の固定資産税についても地代を純地代としているために、建物購入者が負担し同一条件です。
土地の価格変動については、Aには影響なくBには影響がありますが、これを評価することができないので、50年後も変わらないとします。
建物の50年後の取り壊し費用は、Aには契約により必要であり、Bについても取り壊さなければ土地資金の回収ができないと考えて同一条件とします。
Aの保証金は50年後に一括返還され、Bの土地代金は50年後に売却して資金回収するとします。
以上AとBの差異のみを抜き出せば次のようになります。
Aケース |
50年間保証金資金が寝、さらに地代を支払い続ける。 |
Bケース |
50年間土地代資金が寝る。 |
|
このAとBの差異が経済的に評価して同一となれば、定期借地権とするのか土地を購入するのかは、同一の価値になります。ただ50年後に地価がどうなるのかの影響の差異がありますが、これは誰にもわからないことであり個人の考え方ということになります。地価一定とした前提は、現状の地価動向からみて安当であろうと思います。
地代につきましては、毎年一定の上昇率により改定される契約を想定します。
この上昇率をiとします。また地代は50年間の単純合計でなく運用利率 r を設定し、うべかりし利益もコストとして認識します。
保証金や土地代資金は銀行から借り入れ利率 t で調達し、元利均等方式で返済したときのコストを計算しております。
●
このようにして計算されたものの例を挙げますと、5千万円の土地、保証金5百万円、定期借地権の期間50年、銀行からの借り入れ利率3%、運用利率1%、地代上昇率毎年1%であるなら均衡地代は地価に対して1.043%、年額にして542,500円となります。この地代であるなら、前提条件の下では土地を購入した場合と定期借地権は同じことになるというわけです。
また保証金は地価に対する割合aにより示されており、それぞれの事情にあわせて保証金を増額して地代を減額し、経済的には同一になるように計算することもできます。
|