(3)供給者・需要者サイドの均衡地代

 供給者サイドも需要者サイドも(r)の値を大きくしたいと考えております。
 なぜなら、rの値を大きくすればするほど、供給者サイドの地代は大きくなり、需要者サイドの地代は小さくなるからです。
双方ともに、rの値を大きくしたいのですが、双方の地代(a)率は、この思惑とは裏腹にますます乖離し、全く一致点を見いだせません。
しかし、双方の方向が異なりますので、双方の思惑が一致する均衡点に向かう力が働くことになります。
 従って、rの値は、供給者・需要者サイドとも同値に均衡することによって地代が決定されることになるのです。
 そこで、前記により求められた供給者・需要者サイドの地代算式を使って、地代ファクター(n)(a)(i)(t)に一定値を与えて、表を作成し、供給者・需要者サイドの均衡地代を模索して見ると次の通りとなります。

●地代ファクター
n=50年
α=10%
i=1%
t=3%

●地代率表

rの値
0.5%
1.0%
1.5%
2.0%
2.5%
3.0%
供給者
サイド
0.00351
0.00706
0.01064
0.01425
0.01790
0.02159
需要者
サイド
0.01174
0.01043
0.00922
0.00811
0.00710
0.00620

●均衡地代の模索

 供給者サイドはrの値を上昇させれば、つまり(0.5%)から(3.0%)に上昇させれば、地代(a)率は0.351%から2.159%に増大します。
 需要者サイドはrの値を上昇させれば、つまり(0.5%)から(3.0%)に上昇させれば、地代(a)率は1.174%から0.620%に減少します。
 上表によれば、均衡点はrの値が1.0%から1.5%の間にありそうです。
 結局、r=1.35%が均衡点です。この値は、表から別紙の通りグラフを作成すれば容易に得ることが出来ます。
表からは極め細かい数値が用意されない限り難しいでしょう。
 その結果、供給者・需要者サイドの地代率0.00957が均衡地代率となります。
 従って、地価を48,000千円と想定すれば、均衡地代=48,000千円×0.00957÷12月=月額38,280円となります。

3.終わりに


 上記は、供給者・需要者サイドの均衡を前提とした理論地代であって、実際の地代は、双方合意により自由に取り決められますから、諸般の事情において様々です。
需要者にとって、場所を含め気に入った定期借地権ならば、供給者サイドのrを大きくする地代を容認するでしょうし、あくまで購入を希望するならば供給者サイドのrを小さくすることを希望し、それがかなわぬ場合、購入に転向しようとします。
それも借入金(期間、利息)との関係で大きく変わります。
 定期借地権についても、購入についても、絶対額即ち支払限度が重要です。
 地価上昇・借入金利息の上昇が同時に進行すれば、所得(支払限度)の上昇がないかぎり、実需としての定期借地権・土地の需要は減退し、またぞろ投機を目的とした仮需が市場を支えることになります。
 又、所得(支払限度)が略一定の状態で借入金利息が上昇すれば、実需に支えられた地価は下がらざるをえません。
 供給者にとっても、定期借地権に供する理由又は目的によって異なり、定期借地権に供するしか利用方法がない場合、需要者サイドのrを大きくする地代を容認するでしょうし、その他の方法により均衡地代を上回るリターンが期待出来る場合、あくまで供給者サイドのrを大きくしようとします。
 いずれにしても、個別の事情や将来の動向をにらんで、ファクターの数値を選択し、指標としての均衡地代を求め、双方合意の上、地代が決定されることとなります。

 

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